KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年11月号
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を見に行くつもりなのか》京祐とは理有の兄で、商家の跡継ぎだ。「実際に退蔵は黒船を自分の目で見ようと三田から浦賀へと駆け付けています。それも百姓の姿に変装して」と玉岡さんは説明する。故郷の先人たちの偉業日本が国際化を遂げるために女子教育に力を注いだ退蔵は、玉岡さんの母校「神戸女学院大学」の創設者の一人でもある。黒船を見るために江戸へ向かった理有は、一時、学者の家に身を寄せる。この学者の名は三田藩の川本幸民。当時の三田藩主、九鬼隆国は幸民を江戸へと送り、蘭学を学ばせていたのだ。「日本で初めて〝化学〟という言葉を使い、マッチの発明や日本で初めてビールを醸造したのも幸民。日本の化学の先駆者が三田から輩出されているというのも、とても興味深いでしょう」と玉岡さんは語る。日本が国際的な発展を遂げる重要な拠点の一つとなった神戸港。その開港と発展に小説の中に登場する退蔵たち三田の出身者が重要な役割を果たしていたことが、小説の中で明かされていく。「三田出身者たちの活躍なくして現在の神戸港の繁栄はなかったのです」と玉岡さんは強調した。『帆神―』の舞台は江戸後期。播州高砂の漁師から廻船問屋の海商へとのぼり詰める工楽松右衛門の一代記を描いた。彼が発明した「松右衛門帆」が日本の海運業に革命をもたらすが、「その偉大な功績は地元でもあまり知られていなかった。それなら小説で伝え、多くの人に知ってもらおう」。玉岡さんはそんな一念からこの長編を執筆し、第16回「舟橋聖一文学賞」と第41回「新田次郎文学賞」をW受賞している。「なぜ、歴史に多大な影響を与え、日本の進歩に貢献した先人たちが、地元でさえあまり知られていないのか」。玉岡さんが抱いてきたこの素朴な疑問と郷土の先人への敬意が、数々の小説を生み出す原動力になっていることが、著作を辿っていけばよく分かる。神戸に実在した商社「鈴木商店」の女性店主、鈴木よねを主人公にした『お家さん』は刊行後、舞台化やテレビドラマ化されるなど話題を集めてきた。よねの功績は、小説『お家さん』によって現代日本人に再認識され、改めて評価されたといえるだろう。三田や神戸。これからも故郷・兵庫県の史実を掘り起こしていくつもりだ24

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