ピーを取っておいた。俳句がしたためられている。毛筆で流麗に書かれている。鳥わたる こきこきこきと 罐切れば 不死男の代表作である。ハードカバーの立派な句集『甘露集』(角川書店・昭和五十二年刊)の表紙裏に大きく載っている。 調べてみると、終戦直後の作品らしい。《新興俳句弾圧事件で1943年2月までの二年間投獄されていた不死男の境遇に重ねて鑑賞されることが多く、不死男自身も「敗戦のまだ生々しく匂う風景の中で、私は解放された明るさを噛みしめながら渡り鳥を見上げ、こき、こき、こきと罐を切った」と述べている。 「渡り鳥」を自由の象徴と捉え、幽閉されていた日のことを「罐」に見る。解放されるときの音が「こきこきこき」であり、》 とこれはわたしの感想ではなくネットからの情報。しかし、「こきこきこき」というオノマトペにその時代と心持ちが表されているのはわたしにもよくわかる。 因みに「鳥わたる」が秋の季語。 木割さんは、不死男の代表句ともいえるこの俳句にも注目したのだろう。そして、不死男を尊敬してやまないという友人の手に持たせてやりたいと思われたのだろう。わたしには多少の未練もあったのだが、今となってはいいことをしたのかなと思っている。 木割さん、お帰りの時に、「ここはまた来たいところだ」とおっしゃったが、叶わなかった。 ところで、木割さんのその友人とはどなたなのだろう。あのハガキ、今も大切に保管して下さっているだろうか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・代表者。「半どんの会」会員。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。■今村欣史(いまむら・きんじ)兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)、随筆集『湯気の向こうから』(私家版)ほか。(実寸タテ22㎝ × ヨコ3㎝)105
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