KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年10月号
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ブラックホールの衝突によって生じたと言いましたが、それらの質量は、計算によれば、太陽の二九倍の質量と三六倍の質量です。その巨大な質量の天体が衝突してなお、地球に届く「揺れ」による空間︵距離︶の変化は、〇・〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇一にすぎないのです。図1にその「人類が初めて捕えた重力波の信号」を載せておきます。縦軸の「Strain」というのが変化量です。LIGOでは四キロメーターの距離を測っていましたから、その変化はわずか〇・〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇四メーター、つまり、陽子の大きさの一〇〇〇分の一にすぎないのです! よくそんな距離の変化が測れたものだと感心するでしょう。でもLIGOは、そのさらに一〇分の一以下の変化も捕えることができます。この観測装置の概念図は図2のようなもので、じつはこれは第34回でお話ししたマイケルソン・モーリーの実験で使った観測装置の応用なのです。マイケルソン・モーリーの実験では光の速度二〇一七年のノーベル物理学賞を受賞しました。では、重力波はどうすれば捕えられるのでしょうか。トランポリンでは、飛び跳ねている人のところはもちろんのこと、そこから離れた、「揺れ」が伝わってきているところでも、トランポリンの表面は伸び縮みしています。伸び縮みしているということは、トランポリンの表面の長さが変化していることを意味しています。もしトランポリンの表面に定規のように目盛りを描いておけば、その目盛りの間隔が長くなったり短くなったりする様子が見られるでしょう。空間も同じです。原理そのものはとてもかんたんで、ある二地点間の距離を測っておくだけです。すると、重力波、つまり「揺れ」が伝わってくると、その距離が長くなったり短くなったりの変化を起こすのです。原理だけはかんたんですが、実際にそれを行うのはとても難しいことです。というのは、この「距離の変化」が、とても小さいからです。LIGOが人類で初めて捕えた重力波は、二つの「落ちて」しまうので、じっと止まっているもののほうが珍しいくらいです。このとき、その動きが空間を揺すってしまい、その「揺れ」が離れた場所へも伝わっていくのです。この伝わっていく「揺れ」を「重力波」と言います。この重力波を捕えることに成功したら、空間がトランポリンのように弾性を持っていること、延いては、一般相対性理論が正しいことを証明できます。そして、それはすでに成功しているのです。二〇一五年九月一四日、米国の重力波観測施設LIGO︵Laser Interferometer Gravitational-wave Observatory︶が、人類で初めて、重力波の検出に成功しました。これは、二つのブラックホールが衝突した際に発生した空間の「揺れ」を観測したものでした。この観測データは、充分に検証されたあと、翌二〇一六年二月一一年に発表されました。そしてそのLIGOの建設に貢献した三人の物理学者、ライナー=ヴァイス、バリー=クラーク=バリシュ、キップ=ステファン=ソーンが、43

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