送局の花形部署から退いたテレビマン。かつて陸は現場の〝エース〟としてバラエティー番組の企画・構成に奔走していた。局内のライバルたちとの軋轢や他局との熾烈な競争社会が詳細に描かれる。物語はフィクションだが〝生き馬の眼を抜く〟テレビ局の実態がリアルに浮き彫りにされる。「これは〝ほぼ浜口さんの実話〟では?」と向けると、苦笑した。年間の漫才チャンピオンを決める「M︲1グランプリ」(ABCテレビ)、〝ピン芸人〟(一人芸)のナンバーワンを決める「R︲1グランプリ」(関西テレビ)の草創期のころに裏方の漫才作家として活動。さらに、「ビーバップ!ハイヒール」(ABCテレビ)や「たかじん胸いっぱい」(関西テレビ)、「なるトモ!」(読売テレビ)など数々の人気バラエティー番組の放送作家を務めてきた経験が、小説のなかに随所に散りばめられている。また、陸の一人娘の子育ての悪戦苦闘ぶりも臨場感あふれる。現実には二女の父親で、今も小説執筆の合間に、「娘の塾の送り迎えなどをしています」と話す姿に、つい陸の姿を重ねてしまう。ただ、陸と違うのは、夫婦共働きで仲良く力を合わせ、二女を育てている。30歳からの書く覚悟幼いころから読書好き。小説の世界に魅了されてきた。最初にのめり込んだのはSF小説だった。小学3年生のときに星新一を読んで以来、筒井康隆をはじめ国内外のSF作家たちの小説を貪るように読んできた。だが、大好きな小説の執筆は封印してきた。なぜか?「30歳まで小説を書かないと決めていた」からだ。これは、敬愛する星、筒井の経歴などから学んだという〝教え〟なのだが、本当に、この教え通り、それまで小説は書かず、ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、翌年、32歳で作家となった。すでに20代のころに、小説を創作する力を備えていたが、「放送作家としてのコネクショ21
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