カレーラス。「三人のなかで唯一人、ドミンゴだけが挑み続けたのが『オテロ』でした」。このオペラに対し、秋川は「オテロ役で出演する」とは言わず、「オテロ役に挑戦したい」と語ったのが印象的だった。ベテランのテノール歌手にとってさえ、いかに難しいオペラであるかが想像できる。この「オテロ」に今年7月、秋川は初めて挑んだ。「世界中のテノール歌手が憧れるのがオテロ。私もずっと挑戦したいと思いながらも躊躇してきました。しかし、今ならできる…。逆に今やらなければ、今後、できないかもしれない」と並々ならぬ覚悟で挑んだという。オペラに彫刻。さらに、もう一つ全身全霊で打ち込んできたことがある。愛媛県西条市の出身。地元には江戸時代から続く伝統の西条だんじり祭りがある。強い郷土愛を持つ秋川は、どんなに忙しくても、多忙なスケジュールを縫い、「西条だんじり祭りには必ず毎年参加してきました。皆勤賞を続けています」と笑顔で語る。彫刻への興味も、実は16年前に突然沸き起こったものではない。幼いころから親しんできた地元のだんじりの彫り物に魅せられていたのだ。「祭りがある10月15日。この日は西条の人たちにとって正月。一年の始まりなんです。私もこの日を一年の起点にしています」現在、米メジャーリーグで大谷翔平ら日本のプロ野球選手が活躍し、サッカーW杯で日本が大健闘するなど、日本のアスリートが世界の第一線で渡り合う姿が珍しくなくなっているが、30年以上前にオペラの本場、イタリアへ単身留学し闘ってきた日本人がいた…。繊細さと豪放磊落さを兼ね備えた唯一無二の日本のテノール歌手、秋川雅史は魂を込めた歌声で聴く人の心を震わせ続ける。オペラ、彫刻、西条だんじり祭り…。すべてにおいて「全身全霊で挑みたい」という23
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