対し、社会保障費は約38兆円ですから、財源のすべてを消費税収で賄えていないので、この問題を議論する意味はなさそうです。─消費税は、負担割合が低所得層になるほど重くなる、いわゆる逆進性があるという指摘がありますが。由井 確かに所得が低いほど所得に対する消費の比率が高いという傾向があるので、結果的に低所得者の消費税の負担割合は高くなってしまいます。しかし、貯蓄も含めた生活水準で考えると、例えば収入が少なくても資産があるリタイヤ層なども存在しますので、単年度収入の多寡のみで豊かさの判定は困難です。また、個人資産をもつ人が多い社会では、単年度の所得を豊かさの指標とするよりは、消費の額そのものを豊かさの指標とする方が望ましいと思われます。その上、生涯所得の観点からは稼いだお金は貯蓄も含めいずれ消費されるため、消費税は過去の蓄積に課税する仕組みでもあることから、消費税を財源に社会保障で低所得層に厚く給付することで累進的に再分配することになり得ます。消費税の逆進性だけに焦点を合わせて議論しても適切な対応を見出すことができず、所得を含む税制及び社会保障全体の観点から対処すべき問題といえるでしょう。─高市政権は消費税減税に動き出しています。仮に減税となった場合、先生はその影響をどう見ますか。由井 食料品の税率が0%になると税収は年間で約5兆円、1%では約4兆3千億円の減収が見込まれ、その穴を埋める代替財源の確保も不透明なので、社会保障の土台を揺るがすリスクとなる可能性があるのではないでしょうか。確かに中東情勢緊迫化による原油高騰や円安進行による輸入品価格上昇などの影響による物価高で短期的には増収となるかもしれませんが、中長期的には経済の減速により法人税・所得税が減収となるリスクや物価対策による財政圧迫も懸念されますよね。こうした状況を踏まえると、導入すると変更が困難な消費税減税よりも、困窮層への直接給付など経済状況に即応できる手法を優先し、食料品減税の中止も視野に入れるべきではないかと個人的には思います。85
元のページ ../index.html#85