KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年6月号
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れわれのところのような加速器施設では日常的に観測されていることです。ですから、われわれ物理学者にとって、「時間の遅れ」はあたりまえの現象なのです。人間の乗り物は、今はとても遅くて、そのために「時間の遅れ」を実感することはありませんが、遠い未来に、光の速度に近い乗り物が開発されれば、それが実感できるようになるかも知れません。もしそうなれば、そのような乗り物、たとえば宇宙船に乗って、何年間も宇宙を旅して、地球に戻ってきたら、その乗員たちの時間は遅く進んでいたわけですから、乗員が経験した時間と、その間地球にいた人たちが経験した時間には大きな開きができてしまいます。乗員が数年しか経っていないと思い込んでいても、地球ではそれよりはるかに長い時間が経っていることになります。これは、要するに、乗員は未来に行ったことになるのです。そう、未来行きのタイム・マシーた。それが完全に理論値と一致していたのです。やはり特殊相対性理論は正しく、時間は遅くなることが証明されました。人間が乗るものは現時点では光よりもずいぶん遅いのですが、そうでなければ、光の速度近くにすることができます。それは、この連載の最初のほうにも出てきた、加速器です。粒子であれば、光の速度近くにまで加速できます。粒子は、電子や陽子のようなものはきわめて安定でその寿命は宇宙の年齢より長いのですが、粒子によっては、短時間で崩壊してしまうものもあります。みなさんも、放射性物質の半減期なるものは耳にしたことがあるでしょう。この寿命は粒子の種類によって決まっているのですが、加速器で加速すると、その寿命が延びていくのです。そしてその延び方は、速度から「時間の遅れ」として計算した値とぴったり一致しています。これはわざわざ特殊相対性理論の検証のために実験しなくとも、わとはあります。当時は、というより今も、人間が乗り込む乗り物で、光の速度に近いような高速なものはありませんから、その分、ほんの少しの時間の遅れでも測定できるような、きわめて正確な時計を使いました。それは原子時計と呼ばれるものです。これを航空機に積んで地球を一周するのです。実際には、西回りと東回り、一周ずつ回りました。時計も、個体差がないよう、それぞれに二台ずつ積みました。それによって計測された「時間の遅れ」は、一〇〇〇万分の一秒の桁というわずかなものでしたが、特殊相対性理論から予測された量と一致していました。実は「地球を一周する」という動きは、直線運動ではなく(地球が丸いため)、地球の重力も受けているので、完全に特殊相対性理論の言う「力がかかっていない」という条件ではないのです。しかし、それらの影響を計算して補正し、純粋に特殊相対性理論による時間の遅れの分を抽出しまし37

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