姿が見えるまでの時間が、宇宙船が止まっているときは一・〇秒なのに、動いているときは一・一五秒後になってしまっているからです。この宇宙船は同じ速度で動いているので、慣性系です。したがって、相対性原理により「力学法則はどの慣性系においても同じ形で成立」しなければなりません。そして、光速度不変の原理により「真空中の光の速さは光源の運動状態に無関係に一定で」なければなりません。この二つの原理が絶対だとすると、宇宙船の速度にかかわらず、一・〇秒後に自分の姿が見えなければならないのです。この問題をどう考えるか。答えはひとつしかありません。宇宙船の外の観測者が一・一五秒間で起こったと考えていた現象が、宇宙船の中の観測者にとっては一・〇秒の間に起こっていた、ということです。つまり、宇宙船の中と外で、時間の進み方が違う、と考えるしかありません。宇宙船の中では、時間は、一・一五倍遅く進んでいる、言い換えれば、その逆数の〇・八五秒かかるので、観測者が自分の姿を見るのは、一・〇秒後です(左下)。鏡を見るのにこんなに時間がかかるのですね、巨大な宇宙船だと。つぎに、この宇宙船を、光の半分の速度、つまり秒速一五万キロメーターで動かします(図の右)。まず、自分から光が出る時刻を同じ〇・〇秒とします(右の一番上)。そこから〇・五秒経って、光が一五万キロメーター飛んでも、鏡のほうも七・五万キロメーター動いてしまっていますから、まだ光は鏡に届いていません(右の二)。一・〇秒経って、ようやく光は鏡に届きます(右の三)。そこから光は鏡で反射して宇宙船内の観測者のところに戻ってくるのですが、それがいつなのかの計算は僕のほうでしておきます。それは一・一五秒後です(右の四)。以上のできごとは、宇宙船の外の観測者から見れば実に自然なことなのですが、このままだと、宇宙船の中の観測者から見るとおかしなことが起こっています。というのは、自分の原理です。これは、「真空中の光の速さは光源の運動状態に無関係に一定である」というものです。前回お話しした通り、これは観測事実です。この二つをもとにするとなにが起こるのか、まずは時間について考えてみましょう。切りのよい数字を扱うために、とても長い巨大な宇宙船を考えます。長さなんと一五万キロメーター! 光が一秒間に進む距離の半分です。この宇宙船の中と外にそれぞれ観測者がいます。最初、この宇宙船は止まっているとします(図の左)。宇宙船内の観測者は宇宙船の最後尾にいて、最前部にある鏡を見ています。鏡を見るという行為は、自分の身体から出た光が鏡のほうに飛んでいって、鏡で反射して戻ってきて、自分の眼に入ることです。図では、時系列順に、上から並べています。まず、時刻〇・〇秒で、自分から光が出ます(左上)。その光が鏡に届くのは〇・五秒後です(左中)。そして、鏡で反射した光が観測者のところに戻ってくるのにさらに〇・65
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