り、姿を変えていたり、かくれんぼしていたり。「手塚先生のキャラクターをボクの絵の中に描く日が来るなんて夢のようだ!と思いました。うれしいけれど恐れ多くて、少し控えめに…。キャラクターの正面の顔は手塚先生が描くものだという思いもあって、控えめに描きました。それでも、本当に描いてよかったのかな…と今も思っています」。今作でわたせさんが描いたカップルは、バラの咲く季節、白馬に乗って記念館を訪れる。「手塚先生が描く動物が大好きなんです。しなやかで柔らかな動きとか、飛んだり跳ねたりする躍動感とか。子どもの頃、ウエスタンものの『サボテン君』に登場する馬に魅せられてから、特に馬はどうしたらこんなふうに描けるんだろうと、ずっと考えていました」。長いあいだ特別に思ってきた手塚さんの「馬」を、わたせさんはこの度、作品の中に描いた。カップルを乗せた白馬。『リボンの騎士』サファイアの愛馬オパールだった。■手塚治虫との不思議な縁 宝塚市出身の手塚さんと神戸市出身のわたせさん。2人には共通点がある。「子どもの頃、六甲山で昆虫採集をしていたこと。ボクはよくカマキリを捕まえていました」。手塚さんの昆虫好きは作品でも知られているが、わたせさんも実は昆虫好き。画業をスタートしたきっかけは漫画雑誌に投稿した『新漫画昆虫記』(1974年)。昆虫を主人公としたギャグ漫画だった。今展では原画を展示している。わたせさんの初期の漫画、しかも原画を目にする機会はそう多くはない。「本当はあまり見せたくないんです。なんだか恥ずかしくて(笑)」。2人の「昆虫記」の原点となる六甲山は、神戸市と宝塚市を繋ぐように位置する山塊。「神戸の風景は、手塚先生も作品の中で描いているし、ボクも「風が連れてきた人」 ©SEIZO WATASE / APPLE FARM INC.28
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