KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年5月号
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その和船のようなフォルムから「船の体育館」と親しまれている高松市の香川県立体育館は、前回ご紹介した東京カテドラル聖マリア大聖堂と同様に世界的建築家、丹下健三がHP(Hyperbolic Paraboloid)シェルを応用して設計した貴重な建築です。この建物は大きく①吊り屋根とその支持体、②競技場部分の構造体、③観客席部分を支持する格子梁という3つの部分に分けることができ、①の吊り屋根がHPシェル、いわゆる双曲放物面によるシェル構造になっていますが、型枠にコンクリートを打ち込んだ東京カテドラルとは作り方が異なります。屋根は真上から見ると小判型になっていますが、その長い方向に約1.2m間隔で『)』状に吊りケーブルを張ります。そして短い方向にはケーブルに直交させ約1.2m間隔で『(』状に押さえ鋼を配していきます。そしてできた約1.2m四方のマス目にコンクリート板を敷いてそこから突き出た鉄筋を溶接、目地部分にコンクリートを打設して巨大なHPシェル構造の屋根を形成しています。軽量で強度もあるHPシェルの屋根だからこそ、埋立地の軟弱地盤に柱のない大空間を実現できたのですね。この屋根の支持体となる側梁と妻梁には大きな引張り力がかかるため、あらかじめ圧縮応力を加えて引っ張り応力を打ち消すプレストレストコンクリート(PC)を採用。その断面は三角形の中空になっていて、この部分を空調ダクトに使用するというアイデアも。そしてこの支持体を4つの鉄筋コンクリート製の大柱で支えていますが、ここに外へ開く力が働くため小判の短い方向にPCの地中梁を仕込んでこれを防いでいます。両端を浮かび上がらせて柱の数を少なくしたのも、軟弱な地盤に対応するためです。船首のように反り上がる③の格子梁のスラブ(床板)は、②の競技場部分を挟んで2つ設けられています。上辺18m、底辺37mの台形状で、側梁と妻梁によって支持され、ケーブルの重しの役割も担っているようです。菱形の格子梁はスラブのたわみを防ぐだけでなく、そのワッフルのような形状はデザインのアクセントにもなっています。「どう建てるのか?」を追求する平尾工務店にとって、構造は大きなテーマです。おなじみの建物から世界的名建築までさまざまな建築物について、「構造」という視点を交えながら一緒に学んでいきましょう。香川県立体育館Chapter 7建築構造インサイト120

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