KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年5月号
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とvol.5知美の「作家の言葉」のなかで「書線は心臓の鼓動の軌跡、呼吸の形象化である」と持論を語り、「落筆から筆を擱くまでの心のリズムを書線に封じ込め、鑑賞者に制作時の心の動きが直に的確に伝わるように努力した」と解説しています。同展では井茂圭洞氏の制作物の中から、重要と認められ2015年に神戸市立博物館に寄贈された作品を中心に、新たに選抜された作品を加え、84点を展示。文化勲章受章を記念し、その偉大な書業の足跡をたどります。目の前の作品一つひとつから伝わってくる一回性の時間芸術に込められた渾身の想いを直に受け止めてみてはいかがでしょうか。に感銘を受け、この出会いがその後の人生に大きな影響を与えました。書の道に進み、日本人固有の美意識が生み出した「かな」の美に魅せられた井茂氏は「かな書」の第一人者となり、「散らし書き」は現代の美的感覚を備えた独創性豊かな作品として高い評価を受けています。1989年の兵庫県文化賞に続き1998年に神戸市文化賞を受賞。2003年に日本芸術院賞受賞、2012年には日本芸術院会員に就任します。2023年度の文化勲章を受章し、その翌年には卓越した功績に対して神戸名誉市民の称号が贈られました。2024年の第11回「日展」多くの著名な書家を輩出してきた兵庫県。その一人、井いしげ茂圭けいどう洞氏(本名・雅吉)は1936年、神戸市に生まれました。幼少期に結核を患い、医学の進歩に救われた経験を持ち、医師を志して兵庫県立兵庫高校に入学。「どんな職業に就いても字が上手いほうがいいだろう」と入部した書道部で日本を代表する書家・深みやまりゅうどう山龍洞氏の指導を仰ぎます。師の書一筋に生きる姿勢特別展 文化勲章受章記念井茂圭洞の書―神戸が生んだかな書の巨匠―《ほととぎす》 2002年 紙本墨書 神戸市立博物館蔵12

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