KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年4月号
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PROFILE 多田 将 (ただ しょう)1970年、大阪府生まれ。京都大学理学研究科博士課程修了。理学博士。京都大学化学研究所非常勤講師を経て、現在、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所、准教授。加速器を用いたニュートリノの研究を行う。著書に『すごい実験 高校生にもわかる素粒子物理の最前線』『すごい宇宙講義』『宇宙のはじまり』『ミリタリーテクノロジーの物理学〈核兵器〉』『ニュートリノ もっとも身近で、もっとも謎の物質』(すべてイースト・プレス)がある。が伝搬するのだ、と。ところが、どうしてもエーテルなるものを発見することはできませんでした。そこで、こう考えます。波は媒質の中を伝搬するので、その媒質が動いていれば、波の伝搬速度も変わるはずだ、と。水が流れているときの水面の波の速さや、空気が流れているときの音の速さは、確かに変わります。では光の場合はというと、たとえばエーテルなるものが宇宙に満ちている場合、地球は太陽の周りを公転しながら自転しているので、一日の中の昼と夜、あるいは一年の中の夏と冬では、エーテルに対する速度が逆向きになりますから、その速度差を測定できるはずだ、というわけです。彼らはマイケルソン干渉計という装置をつくり、その速度差の測定を行いました。そしてその結論は──誤差の範囲内で速度差はなかったのです。その後、時代とともに装置の精度は上がり、きわめて高精度の測定ができるようになりましたが、現在に至るまで、この速度差はないことが証明されています。このことはエーテルの存在を否定しましたが、同時に、光は、それに向かっていくとき(たとえば夏)であろうと、それから遠ざかるとき(たとえば冬)であろうと、光に対する向きや速度に関係なく、どんなときでも光速度が一定であるという、「光速度不変」の原理を証明したのです。特殊相対性理論は、この「光速度不変」がスタート地点となっています。アインシュタインは、光速度が不変なら、いったいなにが起こるのか、を考えました。32

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