KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年3月号
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今村 欣史書 ・ 六車明峰 「なかきよのとおのねふりのみなめさめなみのりふねのおとのよきかな」 なんのことかおわかりだろうか?  白鹿記念酒造博物館に出かけた。「堀内ゑびすコレクション展」のミュージアムトークに参加するために。直径一メートルもあろうかという大きな酒林が迎えてくれる。 テーマは「宝船」。 このコレクションは医学博士でもあった郷土史家の堀内泠氏が集めたもの。 氏は700点ほどもの宝船に関する資料を収集しておられたのだが、今回は絵画を中心に約170点が展示されていた。 解説を担当されたのは館長の弾だんじょうばら正原佐和さん。驚いたことにわたしを覚えておられた。もう10年以上も前に取材でお会いしている。本誌2015年4月号に「桜博士」と題して、笹部新太郎氏のことを書いた時のこと。この博物館には笹部博士の貴重な資料が大量に保管されているのだ。 展示品を巡りながらの弾正原さんの解説。 「富士山や鷹がいいのはわかりますが、ナスビがなぜいい夢なのでしょう?」と「一富士二鷹三茄子」の初夢の話からの謎かけ。 「親の意見と茄子の花は千に一つの仇もない、ということで、子孫繁栄にも通じる」などと会場の空気を緩めてのスタート。 ある時代には「宝船」の絵の同好会や交換会が流行したことなど興味を引くような話をして下さる。 そんな中、今回の展示の中にわたしが驚くものがあった。それが冒頭の和歌「なかきよの…」である。上から読んでも下から読んでも同じになる回文。 この歌が書き添えられた宝船の絵があったのだ。 解説を聞く。「初夢の夜、枕の下に置いて寝る。すると良い夢を見ることが出来る。もし悪い夢を見てしまった場合は、川に流すことで縁起直しをする」のだと。水に流すというわけだ。 これでハタと思い当ったのが、遠く宮城県角田市でパフォーマーとして活躍している「ぶんぶんさん」こと森文子さんだ。 彼女は毎年のように初夢の時に、この風習のことをSNSに上げている。今年も1月2日付でこんなことを。  《森家的 初夢は 今晩です 毎年恒例 よさげな 包装紙 引っ張り出して 正方形を連載エッセイ/喫茶店の書斎から ◯  「なかきよの…」11882

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