KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年2月号
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代の科学をもってしても、それが何なのか、まったくわかっていません。暗黒物質のように、候補すら挙がっていません。わかっているのは、「物質ではない」ということだけです。この六八パーセントが物質であれば、宇宙の「進化」の過程に差し支えがあり、現在の宇宙の姿にならないからです。これだけ毎月連載で宇宙の謎を解き明かしてきながら、最後の最後に、「実は宇宙の七割は、得体の知れないエネルギーからできています」が結論とは!ところが、この「暗黒エネルギー」なる正体不明のものは、数式だけであれば、本連載の読者のみなさんは、すでに目にされているのです。ビッグバン宇宙論の初期(第11回)でアインシュタインが自身のアインシュタイン方程式に蛇足のように書き込み、のちに「人生最大の失敗」と言わしめ、そして最新のビッグバン宇宙論(第22回)で華麗に復活した、あの「宇宙項」のことです! そして、それがいったい何なのかはいまだまったくわかっていないということも、第22回でお話しした通りです。今回の話をお読みになられて、みなさんはどうお思いになられたでしょうか。「学者はまるで見てきたように宇宙の話をするが、実際はほとんどわかっていないじゃないか」でしょうか。はい、その通りです。宇宙についてもっともらしいことを言っても、実際に本当の宇宙、地球以外の天体に行った人は、アポロ計画の二一人しかおらず、残りはこの地球にへばりついてあれこれ考えているに過ぎないのです。もしもっと多くの人が本物の宇宙に出られるようになれば、はるかに多くのことが解明されていくことでしょう。この「残りの六八パーセントの謎」は、次の世代を担う若者、あるいは、いまだ生まれてもいない将来の若者たちに、「楽しみ」として取っておこうではありませんか。PROFILE 多田 将 (ただ しょう)1970年、大阪府生まれ。京都大学理学研究科博士課程修了。理学博士。京都大学化学研究所非常勤講師を経て、現在、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所、准教授。加速器を用いたニュートリノの研究を行う。著書に『すごい実験 高校生にもわかる素粒子物理の最前線』『すごい宇宙講義』『宇宙のはじまり』『ミリタリーテクノロジーの物理学〈核兵器〉』『ニュートリノ もっとも身近で、もっとも謎の物質』(すべてイースト・プレス)がある。華麗に復活した宇宙項66

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