比べ、日本のドナーの数は圧倒的に少なく、先進国のなかで、最も臓器移植への意識、対応も遅れていることを実感しました。この事実を一人でも多くの人に知ってほしい」と語気を強めた。片や、もう一つのテーマである〝失踪〟。「年間約8万人もの人が失踪しているという事実をどれだけの人が知っているでしょう?」と切り出し、一見〝平和で豊かな国〟で起きている「この厳しい現実を映画で伝えるために」と、警察関係者たちに会い、取材を進め、その実態を調べていった。舞台に選ばれた神戸や芦屋…試写会は大阪市の「専門学校大阪ビジュアルアーツ・アカデミー」の映写室で行われた。河瀨監督が映画製作を学んだ母校(当時の大阪写真専門学校)だ。試写会から数日後。「ロケの撮影で協力してくれた芦屋市で取材しませんか」と、河瀨監現場の体制、意識の違いに戸惑い、葛藤する彼女の心の支えは、旅で訪れた屋久島で運命的に出会った恋人、迅(寛一郎)の存在だった。だが、七夕の7月7日、迅は二人が暮らす神戸のマンションから忽然と姿を消す…》 「この映画で描きたかったテーマは二つ。臓器移植と失踪問題です」河瀨監督は、現代の日本社会に突きつけられた、この二つの難題と呼べるテーマに真正面から斬り込んでいく。脚本を執筆するために、医師や看護師、移植コーディネーターなど臓器移植の医療従事者を取材。国内だけでなく、「移植の先進国であるスペインやフランスなどにも取材へ行きました」と語り、「西欧に臓器移植医療センター。ここで働く移植コーディネーターのサポートスタッフとして働くコリー(ヴィッキー・クリープス)は約3年前、フランスから日本へやって来た。だが、西欧とは異なる日本人の死生観や倫理観の壁は厚く、移植を待つ子供たちを思うように救うことのできない状況に疲弊していた。医療神戸市東灘区の「シティヒル西緑地」での撮影風景(右から3人目が河瀨監督)22
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