二十面相としましては、仕事の営業妨害をされてしまった気分です。「お前の秘密はこの一冊で全部暴いてやったぞ!」と言われているようで、隠れる場所がなくなってしまったのです。作家は、秘密の蒐集家みたいなところがあって、如何に多くの秘密を有するかがその作家を神秘化し、謎の存在になるのです。キュレーターの山本小五郎氏は、怪人二十面相を演じているこの僕を如何に分析、解析したかと、どこかでほくそ笑んでおられるようですが、そうは簡単に化けの皮は現しませんよ。この「大辞苑」は、私の表面を撫でているだけです。賞ガイド)として出版された『大横尾辞苑』は、英文に訳していただければ、この一冊で、海外の取材時にいちいち説明する必要がなくなるので、ぜひ翻訳していただけると嬉しいです。というのは、このままで伝記にもなっているからです。もし僕が自伝を書くことになれば、きっとこの「大辞苑」を参考にすることでしょう。でも、ここまで事細かく内面外面を暴かれると、実は困るのです。秘密がなくなってしまうじゃないですか。その「大辞苑」は、まるでシャーロック・ホームズか明智小五郎で、秘密を暴いて「どうだ、マイッタカ!」と言わせているようで、わたくし怪人なんて面白い展覧会を企画したものだろうと、思わず拍手をしてしまいました。題して『大横尾辞苑』展です。「横尾」の頭に「大」は不必要だけれど、この「大」は修辞で「大辞苑」の規模の大きさの表現と考えましょう。この展覧会のキュレーションは山本淳夫さんだけれど、サスガ!と言うしかないです。が、ご本人は現実に取り組んでみたものの、「シマッタ!」と後悔されたのではないでしょうか。きっと、「もうやるしかない!」の精神で、この見事な企画をついに全うしてしまったのです。本展にあわせてカタログ(鑑Tadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:横浪 修神戸で始まって 神戸で終る 『大横尾辞苑 これであなたもヨコオ博士!?』~横尾忠則現代美術館~16
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