きに発生するガンマ線に相当します。第27回でお話ししたように、WIMPのひとつであるニュートラリーノの質量は陽子の五〇倍から三〇〇〇倍だと考えられています。もしこれが本当にWIMP同士の衝突による信号であるなら、その質量が一気に絞られたことになります。暗黒物質という、正体も質量も謎の粒子の性質が、ここまで絞られるとしたら、その探索の道程は一気に進んだことになります。プレスリリースにあるように、これが本当にWIMPからの信号なのかどうか確定させるためには、これから多くの検証や研究を必要としますが、今回の成果は、暗黒物質の研究を大きく前に進める偉大な一歩となる可能性が高いです。本誌のこの連載で暗黒物質の探索実験について書いていたまさにこのときに、この大きなニュースをお伝えできたことは、絶妙のタイミングでした。東京大学によるプレスリリースhttps://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/10983/のときの衝突の様子を理論的に解析すると、その衝突の衝撃でいろいろな粒子が生まれることがわかります。僕が携わっているニュートリノ振動実験でも、粒子の衝突の衝撃でニュートリノを生み出しているのでしたよね(第5回と第6回)。このWIMP同士の衝突で生まれる粒子の中で、もっとも重要なのは、ボトムクォークと反ボトムクォークです。ボトムクォークは物質を構成する素粒子のひとつとして、第4回で登場しました。反ボトムクォークはその反粒子で、反粒子については第7回でお話ししましたね。そして、第7回では、粒子と反粒子が出逢うと、対消滅を起こして、光になるという話もしました。この光というのが、ガンマ線です。つまり、WIMP同士の衝突で、最終的にガンマ線が発生するのです。戸谷先生のグループによる解析では、「雑音」の中から拾い出した「信号」は、陽子の質量の二〇倍に相当するエネルギーを中心としたガンマ線でした。これは、理論計算によると、陽子の質量の五〇〇倍のWIMP同士が衝突したととしか考えられない信号だけを抽出したものです。東京大学からのプレスリリースにも書かれていますが、それは大変な作業だったそうです。前回と前々回でお話ししたように、暗黒物質からの信号はほんとうに微弱で、それ以外の「雑音」のほうが何桁も大きいのですから、それも当然と言えます。第26回で、「冷たい暗黒物質」の候補として、「WIMP(Weakly Interacting Massive Particle、弱く相互作用する重い粒子)」についてご紹介しました。その一例がニュートラリーノでしたね。このWIMPは、とても重いため、衝突するとその衝撃は相当なものです。我々になじみ深い「普通」の物質(粒子)に衝突した場合、それを弾き跳ばしてしまうので、その弾き跳ばされた「普通」の粒子を測定する──それが第29回でお話しした、ニュートラリーノはじめとするWIMPの検出の方法でしたよね。そのときは、WIMPと「普通」の物質との衝突を利用する話でしたが、WIMP同士が衝突することもあります。こ73
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