KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年1月号
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故郷・熊本復興への思いこの日の大阪での取材前日まで故郷・熊本にいた。ディレクターを務める「くまもと復興映画祭」に出席していたのだ。2016年4月、熊本地震発生時。行定監督は地元のラジオ番組に出演するため熊本市内のホテルに滞在中、震災に見舞われた。「ホテルの前の熊本城の石垣が目の前で崩れ落ちていくのを見ました」と振り返る。被災した熊本市民を励まそうと、映画祭が企画され、翌年から毎年、映画祭のディレクターとして参加してきた。「今回の映画祭では『楓』を先行上映したのですが、アクシデントがあって…」と、そこで起きたエピソードを教えてくれた。突然、機材の故障で上映ができなくなった。「すぐに復旧しそうになかったので、慌てて舞台へ上がって、その説明をしました」そこで、「もし帰りたい人がいたら申し出て下さい。鑑賞料金は払い戻しますから」と提案したという。「一人も帰る人はいませんでした。観客約千人全員が復旧を待ってくれたんです」約45分後。無事、映画の上映が始まった。行定監督はほっと胸をなでおろすと同時に、「故郷の人たちの映画祭への強い愛情を感じました」と話し、一方で「年々少しずつ関心が薄れつつある地方都市の映画祭を続けていく意義と映画監督として自分に課せられた責務を改めて痛感しました」と言う。日本映画に問われるもの…「同じものは撮らない」という覚悟で新作ごとに撮影手法などをアップデートしてきた。今作の撮影監督は新進気鋭の韓国人カメラマン、ユ・イルスン。『完璧な家族』でタッグを組んだカメラマンだ。行定監督は、「日本人らしいラブストーリーを韓国で活躍するカメラマンが撮ったら、どうなるだろうか」という期待を込めての抜擢だったと話す。イルスンは中学時代、岩井俊『楓』のワンシーン。二人にはそれぞれ言えないことがあった…24

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