KOBECCO(月刊神戸っ子)2026年1月号
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ことですが、夫婦像を描いた画家は誰もいません。世界中を調べてみれば、かつてはいたのだろうか。そんな疑問から、徹底的に調べてみたが、そんな絵は全く誰も描いていないのです。自画像や夫人像はあるが、夫婦が2人並んでいる絵はないのです。ということは、夫婦像はタブーということか? 芸術とはタブーに挑戦することだから、夫婦像をタブーと考えれば、こんな面白いモチーフはない。しかも誰もやったことがないことうと思って描き始めたが、過去にも何点も自画像を描いているので、逆にちっとも不思議なことではないんじゃないかと考えて、止めてしまいました。自分という存在ほど不思議なものはないが、もっとわからない存在は、もしかしたら「妻」ではないかと思い始めました。結婚して69年になるが、未だにわからない存在です。そこで、わからない存在である自分と妻の夫婦像はどうだろうと考えてみました。ところが、ふと気づいた一連の夫婦像を描く前に、自画像を描きました。画家は、自画像の一点や二点は大抵描いていますが、それぞれの理由があるのだろう。僕は今回、自画像を描いたけれど、最初から自画像を描く予定はなく、「何か不思議なもの」を描こうと思ったのです。不思議といえば超自然的なものがあるが、これじゃあ面白くない。自分にとって不思議なものを考えた時、「自分」という存在ほど不思議なものはない。だったら自画像を描こTadanori Yokoo美術家横尾 忠則撮影:横浪 修神戸で始まって 神戸で終る 「夫婦像シリーズ」誕生の話昨年「未完の自画像―私への旅」展(GUCCI銀座ギャラリー)で発表された新作の中に、夫婦の肖像画がありました。夫婦像ってめずらしくないですか?そう聞いてみました。16

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