明くる日は出石の町へ出たのだが、丁度「出石お城まつり」というのをやっていた。大きなお祭りで屋台が並び、大名行列などもあり大賑わいだったが、今回の旅行では予期していなかった。 土産物屋の喫茶ルームで休んでいると、妻がいきなり大声を出した。 「あれっ!○○さん!」と。 昔の同級生に出会ったのだ。さすがに故郷のお祭りである。 そのあと町をそぞろ歩きしていると、娘が「これは?」と。ある蕎麦屋さんの店先の句碑である。 わたし、「あ、山口せいしの句や」と。 「誓子と書いてせいしと読む。有名な俳人。男の人」と。すると、「なんでそんなこと知ってるん?」と言われてしまった。 ちょっと文学やる人なら知ってることなんですけどね。「ホトトギス4S」の一人。 昭和初期に俳句雑誌『ホトトギス』で活躍した水原秋桜子・山口誓子・阿波野青畝・高野素十の四人の俳人の通称。それぞれの名前に共通する「S」の頭文字から。 因みに誓子はわたしが住む西宮に居住した俳人。もう一つ言えば、阿波野青畝も西宮に住んだ人で、その短冊が「書斎・輪」に飾られていることは、以前この欄に書いたことがある。 そうだ、誓子の句碑だった。新蕎麦を刻む人間業ならず 誓子 これはお蕎麦を食べて帰らなくてはなりません。 田辺聖子が「コシのあるしこしことした蕎麦は、すすりこむには手応えも存在感もありすぎて、簡単にはいかない。町は典雅でものやさしいが、この蕎麦は、たけだけしい」と小説「お気に入りの孤独」に書いた出石蕎麦を。(実寸タテ16㎝ × ヨコ11㎝)■今村欣史(いまむら・きんじ)兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)、随筆集『湯気の向こうから』(私家版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・代表者。「半どんの会」会員。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。105
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