今村 欣史書 ・ 六車明峰 前号に続いて出石ネタである。 久しぶりに訪れたのだ。 今回は自分の運転ではなく、大阪の娘一家の車に便乗してのもの。計六人の一泊旅行。 急に思いついてのものだったので宿泊先がなかなか見つからず、やっと予約できたのが但東町の古民家一棟借り。これが面白かった。 天井は真っ黒にすすけている。その昔、囲炉裏で火を焚いたのだろう。担当の管理人さん、「風が吹いたら天井からゴミが落ちてくるかも」などとおっしゃる。そして、さかんに、 「なんにもない所ですよ」と。 いやいや、星がきれいだし、都会にはない自然がいっぱい。掘り炬燵もあってまったりできる。 別に離れもあって男組と女組三人ずつに別れてお泊りすることにした。 「ところで熊は出ませんか?」とお尋ねした。すると、「明るいうちは大丈夫です」だって。 オイオイでした。 しかし、東北では今年不作だったというドングリなどの餌が但馬地方では豊作で、「人里までは出てきません」とのこと。 広い庭では早速孫が小石を積んだりして遊んでいたが、材料を持ち込めばバーベキューも可能。 置かれていたメッセージノートには、過去に泊った人が庭にかわいい鹿が出てきたことなども書いていた。 トイレや洗面所などはきれいにリフォームされていて清潔。 風呂もあったが、これはちょっと…、という感じで、タイアップしている近くの「シルク温泉」にみんなで。 ここでわたしはドジをした。 脱衣場の脱衣箱に衣服を収めて、さて鍵を、と思ったら百円コインを投入しなければならなかった。後で返ってくるという、よくあるやつ。ところがわたし、一銭も持っていなかった。もう裸になった後、どうしたものかと思案していると、そばにいた男性が「どうぞ使って下さい」とコインを提供してくださった。見ず知らずの者になんという優しさ。 とろりとしたシルク温泉の湯と、但馬人びとのあたたかい心に大いに癒されたのだった。 夜、寝る時だが、布団に入ってから枕元でなにやら物音が。ガサガサしているのは一匹のカメムシだった。時にブ~ンと飛んだり、そばのカーテンに止まったり。仕方ないですね、田舎の古民家ではどこかから侵入します。顔面にでも止まらないかとしばらく気になったが、疲れからかそのうち寝落ちしてしまった。他愛のない爺さんです。連載エッセイ/喫茶店の書斎から ◯ 古民家と出石蕎麦116104
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