「客を案内するお茶子さんという方がおいでますよね」とおっしゃった。この「おいでますよね」が実にいい。うれしくなってしまった。加藤さん、ありがとうございます。朝早く起きて聴いた甲斐があったというものだ。思い出すことがある。今は子育て真っ最中の長男が中学一年生の時に書いたレポートがある。ただし、コピー。どうやら学校に提出する前にわたしがコピーしておいたものらしい。「自由研究―兵庫県出石郡(㊟現豊岡市)出石町奥小野(母の実家)の方言調べ」と題されている。どうやら夏休みの課題だったようだ。レポート用紙にはズラリと採取した方言が並んでいる。そしてその解説。加えて出石方言の特徴などが論じられている。これは「まとめ」。《相手の心をおしはかってしゃべることが多い。どの言葉にもやわらかさがある。(略)しゃべれないのでペラペラしゃべれるようになって田舎の人を驚かしたいものだと思った。》中学生らしいまとめだ。その出石方言、たくさん採取しているが、わたしが好きなものを上げておこう。○よお、きんさった。○ええ、うれいだったなああ。○あっきゃぁへんだがな。○おしまいんしゃあ。○よお、ほめいきますなああ。○もう、よおぉすのか。○ちょびかく。○おっとろっしゃあ。○あるだらあ。意味は敢えて載せません。読者でお考え下さい。もう40年ほども昔に採取したもの。今はどれほど残っているのだろうか。(実寸タテ15㎝ × ヨコ8㎝)■今村欣史(いまむら・きんじ)一九四三年兵庫県生まれ。兵庫県現代詩協会会員。「半どんの会」会員。著書に『触媒のうた』―宮崎修二朗翁の文学史秘話―(神戸新聞総合出版センター)、『コーヒーカップの耳』(編集工房ノア)、『完本 コーヒーカップの耳』(朝日新聞出版)、随筆集『湯気の向こうから』(私家版)ほか。■六車明峰(むぐるま・めいほう)一九五五年香川県生まれ。名筆研究会・代表者。「半どんの会」会員。こうべ芸文会員。神戸新聞明石文化教室講師。93
元のページ ../index.html#93