明石海峡大橋を仰ぎ見る一匹の影。日々、自身のテリトリーを主張しながら海底を悠然と泳ぐその姿は「ハーレム」と称され、明石蛸でさえ捕食の対象となり恐れる存在である。その怪魚の正体は「瘤鯛」(コブダイ)である。名に鯛とあるがベラ科に属し寿命は20年前後。大きいもので体長1メートルを超す。肉食性で強力な顎と歯でアワビ、サザエ、蟹をかみ砕く。最大の特徴は「雌しせいせんじゅく性先熟」と言って全てメスとして生まれてくるが群れの支配的な個体がオスへと性転換し額に大きなコブが発達するようになる。魚界ではジャイアン的な存在だが唯一無二の強面は多くの釣りファンを魅了する。これまで世界の怪魚を釣り上げた実績を持つタレントのトモチンさんにお話を伺った。「私は淡路島の翼港で釣り上げました。エサはバナメイエビでしたね。餌付けして堤防から海底に垂らしておくのですが…ひたすら待ちました。とにかく、すごいパワー。コブも大きく、ブサイクで…可愛くて…テンションがあがりました」。気になるお味は見た目と違ってクセがなくあっさりしており、身が引き締まる冬時期が旬。刺身、煮付け、焼き物と様々な料理に適しており関西では高級魚として重宝されている。機会があれば箸を手に頭を突き出し面と向かってご挨拶をしたいと思っている。第144回地元にまつわる妖怪・UMA・生物の謎を探る!!『ひょうご五国の怪物たち 淡路・瘤鯛』神戸のカクシボタンkakushi button写真/文 岡 力■岡力(おか りき)放送作家・コラムニスト・イラストレーター、ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆、番組を企画。日本放送作家協会関西支部事務局長・大阪芸術大学短期大学部客員教授、心斎橋大学・神戸電子専門学校講師。こちらは永遠のライバル「明石蛸」エビで怪魚「コブダイ」を釣り上げたトモチンさん89
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