KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年12月号
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混沌としたインドの魅力愛の手運動は親に育てられない子どもたちに、里親・養親を求める運動です。募金箱の設置にご協力いただける方は協会にご連絡ください。公益社団法人 家庭養護促進協会 神戸事務所神戸市中央区橘通3-4-1 神戸市総合福祉センター2FTEL.078-341-5046 https://ainote-kobe.orgE-MAIL:ainote@kjd.biglobe.ne.jpエジプトを訪れた時、おもしろい経験をしました。喉が渇いたので、コーラーを飲みたくて値段を聞くと、「あなたが日本人なら○○ピアスドル、アメリカ人なら××ピアスドル、ベトナム人なら△△ピアスドル」と言います。「同じコーラの値段が買う側の国籍によって異なるのは不公平ではないか」と言うと「お金のある国からは高い料金を払ってもらい、貧しい国からは少なくもらうのが平等だ」という説明でした。「なるほど、こんな理屈もあるのか」と感心したものです。インドではニューデリーにあるYMCAに宿泊しました。インドに滞在中、私は近くのオールドデリーに行ってみました。ショックだったのは、ボロボロの衣類を身につけ髪の毛が背中まで伸びきった子どもたちが私の側に来て両手を差し出し、物を乞うことでした。次々とやってくるので、どうしたものかと困惑しました。たまたま宿泊所で出会った日本人の学生と一緒に歩いていたのですが、彼は暑さのせいか、物乞いに近寄ってくる人たちの姿にショックを受けたのか、路上で嘔吐してしまいました。手や足など身体の一部を失った人、ハンセン氏病かと思われる鼻がない人、路上でいざって観光客に物を乞うひと、半世紀前のオールドデリーは混沌とした町でした。これまで訪れたアメリカやヨーロッパの国々では路上で物を乞われたことはありませんでした。私にとっては経験したことのない異世界でした。日本や西欧の国々の物差しが使えない国で、驚きと共に文化や福祉について私の頭は混乱してしまいました。障がいや病気の自分の不自由な身体を見世物にして物乞いに明け暮れる路上で暮らす人たちにとって、福祉というのは何なのだろうか、その人たちにとって、幸せとは、生きがいとは何なのだろう、と考え込んでしまいました。インドにはもう行きたくない、という人もいれば、インドほど魅力のある国はない、と言う人もいました。必死になってその日その日を生きぬこうとする、路上で生活する人たちの姿に戸惑うとともに、感動すら覚えたものでした。出会いと学びの旅から公益社団法人家庭養護促進協会事務局長橋本 明Vol.2488

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