一般的には、のどの痛みから始まり次第に尿量が減り、むくみが出て、腎臓が傷んでくる溶連菌感染後急性糸球体腎炎と呼ばれる病気で、これもほとんどのケースで回復します。―慢性腎不全は損なわれた機能を元に戻すことはできないのですか。ある程度進行を抑えることはできても、残念ながら慢性的に悪くなってきた状態を元に戻すことはできません。機能が落ちてくると、透析や腎移植といった治療が必要です。―透析はどんな治療法ですか。尿を作って毒素を体外に排出する機能を持つ腎臓が悪くなると、毒素は体内にたまってしまいます。何らかの方法で外へ出さなくてはいけません。一つは血液透析と呼ばれる方法で、針を刺して1分間に200~250mlの血液を取り出し、機械を通して成分調整をしてから体内に戻します。病院や専門施設に通い、数時間かける必要があります。もう一つの方法が腹膜透析です。お腹の中の腹膜で覆われた空間には、ある程度の量の水が入ります。手術で体の外とつなぐチューブを入れ、それを通してきれいな水を入れておくと、血液から腹膜を通して毒素がしみ出てきます。数時間たって毒素がたまった水を捨てます。自宅で患者さん自身がチューブをつなぎ毎日、繰り返します。―腹膜透析は患者さんの負担が軽くなるのですね。通院の必要がなく拘束時間が短くなるというメリットはありますが、効果には個人差があり、腹膜透析で十分に毒素を捨てることができない患者さんもおられます。また、チューブをつなぐ際に万が一、何かの菌がお腹の中に入ってしまうと命に関わることもあります。さらに、お腹の中で重要な役目を果たしている腹膜を使い続けると弱ったり傷んだりして、腸が動かなくなるケースもあります。患者さんには2つの透析方法を提示して、それぞれに合った方法を選択するようにしています。―腎移植は最後の手段ですか。機能が回復するのですか。最後の手段というわけではなく、透析が必要な患者さんには腎移植という方法も並行して提示します。しかし移植手術にも問題はあり、他人の腎臓を体に入れて定着させるのですから免疫抑制剤を使わざるを得ません。免疫を抑えてしまうと、どこにでもあるちょっとした菌に感染してしまうことがあるという弊害が出ます。特に高齢の患者さんは免疫力がかなり落ちてしまい、肺炎などを起こすとかえって寿命を縮めてしまうリスクがあります。血管を少し太くする手術が必要な血液透析やお腹にチューブを入れる手術をする腹膜透析に比べると、腎移植のお腹を開ける手術は体の負担もかなり大きく、それを乗り越えられるのかという問題もあります。日本では亡くなった方からの腎臓提供は少なく、多くは生きている方からの提供になります。生きている方からの提供の場合、腎臓を提供した方の健康へのダメージという問題もあります。86
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