の物語ではないか”。こんなことが本当に起こるのか。奇跡ではないかと思いました」当時、鈴木は体調を崩して休養中だった。「この役は絶対に引き受けたい。そう思いましたが、夏の酷暑のなかでの映画撮影は過酷です。今の私の体力で持つのだろうか、迷惑をかけないだろうか…と、当初は不安で悩みました」と打ち明けた。また、そのころ、すでに休養明けの復帰作も決まっていた。フランス帰りのシェフ(木村拓哉)とともに東京でフランス料理の店をオープンするために奮闘するパートナーを鈴木が演じた人気ドラマ『グランメゾン東“奇跡のバックホーム”は球場中を沸き立たせた…》 「偶然、この慎太郎さんの奇跡のバックホームのドキュメンタリー番組を見ていたんです。私はあまり野球には詳しくなかったので、この話は知らなかったんです。もっと早く慎太郎さんの話を知っておけばよかった。そう思いました」と鈴木は振り返る。2年前のことだった。それからしばらく経って映画化の企画が立ち上がる。「慎太郎さんのお母さん役を演じてくれませんか?」。映画を企画した秋山純監督たちからの出演依頼だった。鈴木は驚いたという。「企画を聞いて“あっ、あの彼京』の劇場版への出演が決まっていたのだ。この仕事と同時期に新たな映画出演を引き受けることが、容易な決断ではなかったと想像できるだけに、鈴木が「慎太郎の母を演じたい」とこの作品に懸けた強い覚悟が理解できた。育まれた友情一方、松谷は、まだ脚本ができていない段階から映画製作の企画に携わっていた。脚本を担当したのは秋山監督と同じ神戸出身の中井由梨松谷 鷹也(まつたに たかや)1994年生まれ、神奈川県出身。小学3年から本格的に野球を始め、高校時代は投手として活躍。身長185cm、体重74kg、左投げ左打ち。読売ジャイアンツにドラフト2位指名された元プロ野球選手の松谷竜二郎さんを父に持つなど、横田慎太郎さんとの共通点を多く持つ。本作の脚本を務める中井由梨子が率いる野球型俳優エンターテインメント集団「東京モザイク」では4番ピッチャーとして活動。役作りのために福山ローズファイターズの練習生として体重を94kgに増やし野球に打ち込んだ。また、秋山純のもとで制作・助監督としての経験を積んでいる。23
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