KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年12月号
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アジアに目を向ける九州・福岡市 大阪では「大阪中之島美術館」が3年前に開館したが、主に近現代美術品を収蔵している。これに対して「福岡アジア美術館」は文字通りアジアの作品に特化している。また福岡と韓国・釜山はフェリーで往来できるし、隣県の熊本市は台湾の半導体企業TSMCの進出で活況である。福岡アジア美術館は、アジアと本格的に向き合う九州・福岡市の本気の姿勢を私たちに実感させる。ハノイの新妻東一さん(三進ベトナム株式会社) このベトナム展示に協力された新妻東一さんにハノイでお目にかかった。新妻さんは映画『ベトナムの風に吹かれて』製作に関与され、日本のテレビや雑誌のベトナム取材のコーディネータとし「記憶の風景」―投機対象となるベトナム絵画―ても活躍。障害をもつ子どもの施設見学やゴルフなど日本ベトナム間の「目的別ツアー」に定評がある。さらに日本ベトナム友好協会の副理事長でもある。 出展作品について新妻さんとハノイの事務所で話していると、同館所蔵の「肘をつく若い娘」の画家マイ=チュン=トゥ(1906~1980)の別の作品「フオン嬢のポートレート」が、2021年のサザビーズのオークションで310万ドル(約4億6千万円)で落札されたそうである。ベトナム画家の作品が億単位で取引されていることに驚愕した。結局これは投機目的である。 投機とは人間の心理で運用される。たとえば100円のボールペンでも1万円で売ることができる。その理由は1万1千円で売れると買い手が考えるからである。また日本の安土桃山時代の「茶器」が黄金に匹敵したように高額資金を代替する意味もある。付言すれば、これは「贈収賄」に悪用されることもある。私蔵のベトナム絵画の価値は? 今から20年ほど前にハノイの画廊で私は写真の油絵を500米ドルで購入。早速、新妻さんに「鑑定」を依頼した。作者のグエン=ヴァン=ボン(1918年生まれ)は無名。彼が80歳の時の作品となるが、絵の裏書きは作者直筆の証明書ではなく画廊が書いていて無価値。少なくともインドシナ美術学校の卒業生であるなどの記録があれば、作者の詳細がわかる。要するに当時の外国人の好事家向けの「お土産品」。売却して数億円をゲットという妄想は直ちに消滅・・・。もっとも当時の私は投機ではなくベトナムらしい画風を気に入って購入したのだ。また贋作ではないことが救いだ。これは負け惜しみかな?■上田義朗(うえだ よしあき)流通科学大学名誉教授岡山学院大学・短期大学理事日本ベトナム経済交流センター日本代表外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事合同会社TET代表社員・CEO躍動するアジアベトナム元気福岡市博多区の「福岡アジア美術館」を訪問した。本年9月13日~11月9日まで「ベトナム、記憶の風景」というテーマの企画ギャラリーが開催。1975年に終結したベトナム戦争時代の絵画やポスターを中心に約110点が展示されており、同館の所蔵品の奥深さを見せつけられた。その後、この企画展示に協力されたベトナム在住の新妻東一さん(三進ベトナム社)にハノイでお話しを伺う機会があった。文・ 上田義朗X第24回福岡アジア美術館の外観三進ベトナム株式会社の新妻さん111

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