KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年11月号
65/124

のものが移動しているからです。この動きのひとつは、地球の公転です。これが意外に速くて、秒速三〇キロメーターにもなります。人工衛星を打ち上げるロケットでも秒速八キロメーターていどですから、驚くほど速いでしょう? そして次に、われわれがいる銀河系は回転しているので、その動きもあります。この速度は、さらに速くて、地球のところで、秒速二三〇キロメーターにもなります。そしてもうひとつ! この銀河系そのものも移動しています。第23回で、銀河同士が互いに運動しているという話をしたのを憶えておられるかも知れません。この速度は、第14回でお話しした、ビッグバンの名残りである宇宙背景輻射に対してどれくらいの速度か、ということが測定できます。その速度は、秒速六〇〇キロメーターにも達します!このように高速で移動しているわれわれに対して、「冷たい」暗黒物質はほとんど静止しています。ということは、高ていると考えられています。宇宙全体、そう、つまり、この地球、われわれの身の回りにだって、暗黒物質は存在しているのです。ですから、特別な場所に探しに行かなくとも、今われわれがいるこの地球上のどこでも暗黒物質を手に入れることができます。この二点を頭に入れた上で、さぁ、具体的な探索方法です。前回と前々回で、有力な候補であるニュートラリーノとアクシオンについてお話ししましたが、この両者は、その性質がまるで違っていました。ということは、探索方法もまるで違うということです。ニュートラリーノのほうから見ていきましょう。これはとても重い粒子でしたね。しかも「冷たい」暗黒物質ですから、ほとんど静止しています。ところで、みなさんには自覚がないかも知れませんが、たとえば椅子に座ってこの『神戸っ子』を読んでくださっているみなさんも、実は結構な速度で移動しているのです。なぜか。それは、地球そそれを測定する方法はいくらでもあります。電磁波の場合でも、可視光なら装置を使わず肉眼で見えますし、赤外線、紫外線、X線、γ線、いずれもそれらを検出する装置はたくさんあります。電波も、それを通信やレーダーに活用しているくらいですから、検出は容易です。しかし、荷電粒子や電磁波以外となると、とたんに検出は難しくなります。電荷を持たない粒子で、この連載に登場したものとしては、中性子とニュートリノがありますが、どちらもそのままでは検出できません。そこで、これらの粒子は、「荷電粒子に置き換える」ことで検出します。「置き換える」というのは、いったん、通常の物質と反応させておいて、その反応によって代わりに跳び出す荷電粒子を測定するのです。次に考えるのは、その暗黒物質がどこにあるのか、です。これについては、第26回でお話しした通り、密度は低いが、宇宙全体にまんべんなく広がっ65

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る