高エネルギー加速器研究機構の多田と申します。前二回で、「冷たい暗黒物質」の候補二つ、ニュートラリーノとアクシオンについて、どんなものか、お話ししました。どちらも「理論上は存在してもよい」粒子でした。この言い方はつまり、現時点では、それは発見できていないことを意味しています。今回は、これらの粒子を探す実験についてお話ししましょう。まず、探索の方法について考えるために、暗黒物質がどんなものなのか、を思い出していただきます。そもそも「暗黒」とは、現時点で見つかっておらず、つまりそれは見つけるのが困難であることを意味します。かんたんに見つかるのであれば、もぅ見つかっているはずですよね。この二一世紀になっても見つかっていないなんて、相当なものです。なんらかの粒子を見つけるときに、電磁力に反応するものであればかんたんに見つけることができます。荷電粒子(たとえば電子)や電磁波がそうです。荷電粒子であれば、放射線測定器をはじめ、多田先生!素粒子物理学者の 宇宙物理学教室教えて 連載〜第29回〜 「暗黒物質の探索実験」自然界で最も大きな存在が宇宙、そして最も小さな存在が素粒子と考えられている。素粒子を研究することで、宇宙のはじまり、人間の存在を解明する︱︱ 日本の誇りをかけて、その最前線で日々研究に打ち込む素粒子物理学者・多田将先生。謎に包まれた宇宙について多田先生に教えていただきます。さあ、授業のはじまりです!64
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