KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年11月号
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大阪万博で思い出した事がある。神戸ポートピア博覧会に、関学時代付き合ってた文学部の女の子と行ったのだ。大きな会場の噴水の前で、彼女の作ってくれたお弁当を開けて一緒に食べた。あの頃は同学年の男たちとバンドを組んでいて、そのコンサートに彼女が仲良しの友人と観にきて、仲良くなったのだ。その子とはすぐ別れて、その仲良しのもう1人の女の子と今度は付き合い始めた。そして、神戸女学院に通ってたその女の子のアパートに転がり込んでた朝のこと。遠くの方で音がする。トントンまな板の上で何かを刻む音、そしてぷうん、いい香り。「ありがとうね、じゃあ」と言う聞き覚えのある声。僕は眠い目を擦り、のそのそと起きていく。すると彼女が僕にこう言ったのだ。「あの子、彼氏できてんで。お弁当作るためにうちへ寄ってん」一気に目が覚める僕に、「あんたはいつもそうや。スレスレのところで修羅場をすり抜ける。でもそれは相手を傷つけて成り立ってるということを忘れないで」“ポートピアも終わればただの夜に戻って…”と歌ったユーミンの曲を聴くと、この朝を思い出す。僕にはその頃、1日も早く音楽で身を立てたい気持ちしかなく、誰かと深く付き合う発想がなく、流れに乗ってた感がある。でも縁があってこの同じ女子校出身の2人と付き合うことになったのだ。この厳しい箴言の子6通のブルックリンからの手紙「お弁当の子、箴言の子〜神戸での出会い〜」6通目26

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