的に自分の演技を見ることができるようになったと思います」充実した表情から新作への自信が伺えるが、“不安だった”と語ることには理由がある。2年前(2023年)、急病で倒れて病院へ運ばれ、緊急手術を受けて一命をとりとめた。術後1年目に映画出演依頼が届いた。「正直、出演依頼を受けたとこれは私のアナザー・ストーリー〝演じない役作り〟で挑むを撮影現場の“座長”として乗り切り、肩の荷を下ろしたように、安堵の表情を浮かべた。「長らく現場から離れていたので不安だったと言いましたが、その間、観る側から客観的に映画と向き合えることができたので、俯瞰して自分の演技をとらえることができました。若いころはどうしても演技に“我(が)”が出ていたと思うのですが、広く客観想像しなかった出演依頼「映画現場への復帰は久しぶりだったので戸惑いはありました。主演は体力も精神力も必要なので少し不安だったのですが、無事に耐え抜くことができて本当によかったです」映画『道草キッチン』の舞台は徳島県吉野川市。徳島県内での約1カ月に及ぶ長期ロケ文・戸津井 康之撮影・服部プロセス 新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。 第60回は、26年ぶりに映画主演を果たした中江有里が登場。11月7日、徳島県で先行上映、同22日から全国で順次公開される映画『道草キッチン』で久々に〝銀幕のヒロイン〟に挑んだ真意や製作秘話を語った。THESTORYBEGINS-vol.60■俳優・作家・歌手■中江 有里さん⊘ 物語が始まる ⊘20
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