最大級の期待を寄せてくれていますが、舞台美術に関しては、以上のような現状です。総合芸術であるはずの今回の舞台でも、美術に対する関心があまりにも低いのは、美術に対する教養の低さと無関心さが見事に露呈した結果です。この一文が、1人でも多く、舞台関係者の耳に入ってくれることを切に望みます。えないのです。すでにメディアなどにこの催事が大々的に公表されてしまっているだけに、プロデューサーの責任は重大です。この僕の意見は、日本の舞台美術に携わるひとりひとりの耳に伝えたいと思います。本公演が開催されたとしても、現段階では、少なくとも、僕の舞台美術としては、素晴らしいものになるとは期待できません。ベジャールとコラボしたスカラ座の舞台美術や、中国で発表したモーツァルトの『魔笛』の舞台美術や、宝塚歌劇団の大舞台を制作した舞台美術は、スタッフが一丸となって進行しました。が、今回は、そのような情熱は一向に伝わってきません。舞台美術に関しては、舞台美術の名前だけを全面に出した、中身のない催事といえます。関西でも公演されるそうですが、その時は、僕は参加しないことになるでしょう。編集部の田中さんは、この『MISHIMA』の公演にて、クリエイティブのできるプロデューサーがいなかったということです。日本の舞台美術が全てこうであるとは言いませんが、少なくとも、今回、僕の担当する舞台美術に関しての重要性は、ほとんど考慮されていませんでした。横尾に任せておけば何とかなるという、本公演の舞台美術を、無関心に選んだとしか思えない作品だけで済ませようとしたのが、誰の目にも明らかです。僕が、ミラノのスカラ座を舞台に、モーリス・ベジャールの『ディオニソス』の舞台美術を担当した時とは、天と地の相違です。今回のプロジェクトが、現在、どのように進行しているのか知りませんが、疑問があれば、僕とコンタクトをとってもらいたいが、そのようなアプローチも、現段階では全くありません。進行のプロセスそのものが、クリエイティブで出来上がったものは、単に「結果」です。その最も重要なプロセスの進行が、こちらには全く見横尾忠則現代美術館美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、東京都名誉都民顕彰、日本芸術院会員。著書に小説『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『言葉を離れる』(講談社エッセイ賞)、小説『原郷の森』ほか多数。2023年文化功労者に選ばれる。横尾忠則現代美術館では『復活!横尾忠則の髑髏まつり』開催中!18
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