わが国で昨年着工された戸建て住宅のうち約84%は木造住宅ですが、その約8割は軸組工法で建てられています。その名の通り、簡単に言えば柱と梁を組み合わせ、軸材により構造を構成する工法です。そのベースとなったのは、日本の伝統建築です。長年口伝や各派の技術書により継承されてきたその構造を、明治になり木きこ子清きよとし敬らが研究。近代に合った技術書の発行や技術者の育成がおこなわれるようになり、法律にも軸材で組んだ木造の構造基準が定められますが、これが戦後に発展、軸組工法として普及しました。ゆえに在来工法や在来木造軸組工法ともよばれます。木造軸組工法は、まず屋根の部分を最初に完成させます。建物内部を屋根が守ってくれるため、雨が多い日本の風土に向いている建築方法と言えるでしょう。構造面でのメリットは、設計の自由度の高さです。柱の位置や梁を工夫することにより、大きな開口面も可能。可変性が高いのでリフォームや間取りの変更、増築や減築にも比較的柔軟に対応ができます。そして、主な素材が木材ですので、サスティナブルな建築と言えるでしょう。特に国産材を使用すれば、山林の荒廃や林業の衰退といった社会的課題の解決にも結びつきます。一方で、かつては地震に弱いという欠点が指摘されてきました。現に阪神・淡路大震災では、古い建築基準で建てられた木造軸組工法の建物が数多く倒壊しています。しかし、その反省を生かして、接合部の補強金物の使用や、構造用合板との組み合わせにより耐震性が強化され、法律による耐震基準も厳格化されてきています。また、柱で構成されるため気密性や断熱性に課題がありましたが、これも断熱材や気密パッキンを用いるなどの対応で現在では「どう建てるのか?」を追求する平尾工務店にとって、構造は大きなテーマです。おなじみの建物から世界的名建築までさまざまな建築物について、「構造」という視点を交えながら一緒に学んでいきましょう。平尾工務店神戸東モデルハウスChapter 1建築構造インサイト120
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