KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年10月号
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てもフランスの方が保険料がかなり高かったのですね。そしてこの間、失業率は上昇し続け、特に1984年以降、10%前後の慢性的な高失業率が続いていました。また、家族手当は全額事業主負担であることもあり事業主にとって雇用コストが高く、高い失業率を減らすには雇用コストの引き下げが急務となったのです。また、事業主負担を減らすことで企業の国際競争力の回復を狙おうとしました。加えて、高齢化が進み社会保障費も増え、新たな財源が必要となった訳です。─かと言って、これ以上保険料を上げることは難しいという状況だったのですね。木村 まさにそうなんです。そこで1991年、ロカール政権下でCSGが導入され、所得全般を課税対象とし税率1・1%と定めました。その充当範囲が家族手当、高齢者連帯手当、医療保険へと拡大するとともにCSGの税率を上げていき現在は原則9・2%です。CSGの収益も上がっていきましょうか。木村 医療保険の8割を占める全国被用者医療保険金庫の保険料率の1967年から20年間の推移(図2)をみますと、医療保険の財政悪化に対し社会保険料率を何回もアップしました。1984年には、事業主負担12・6%、被用者負担5・5%で合計18・1%に達しています。同年の日本の政管健保の保険料率が労使折半で賃金の8・4%ですから、これと比較し所得、投資益のほか、1997年からはくじ・カジノの獲得金も対象になっています。CSGの導入により、職域連帯と国民連帯とを峻別し、国民連帯になじむ給付については課税ベースの広いこのような拠出金制度によって財源を確保する構造への転換をはかったとみることもできるでしょう。─CSGの制度はどのような背景で創設されたので※賃金全体に対する保険料率出典)Laroque dir.(1999:534-5)の表より抜粋・グラフ化98

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