KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年10月号
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評価されなくてもいいんじゃないかと思いながらも、一方では自分の音楽を客観視できていて、どこかでは自信があった。それでもやはり苦しかったです。Q.どんなことが苦しかったんですか。 もしファイナルにも残れなかったら…って考えたとき、僕自身はいいんです。1番苦しいのは、僕を応援してくれる人たちのことを、自分がいいと思っていた音が世界に認められなかったとがっかりさせてしまうこと。自分には音楽を聴く耳がなかったのかと自分を否定してしまうのではないかと…。そんな裏切り方はしたくないと思っていました。 それから、もう2度と経験したくないくらいの緊張と孤独。性格が壊れてくる人とか、弾きながら気絶する人、暗譜していたのが飛んじゃって曲が終わらなくなっちゃった人なんかを見てきました。 僕には幸い、当時親友だった妻(ピアニスト小林愛実さん。ショパンコンクール第4位受賞)がそばにいたので、壊れることはなQ.ショパンが1番“合う”のでは? 実は違うんですよ。ショパンは好きだけど苦手で、考えて考えて弾いていたんです。勉強はしていたけど、きちんと理解して、ポーランド(ショパンの生誕地)の人にも認められる演奏をするためにはポーランドに留学するしかないなと思いました。それでポーランドに行ったんですけれど、それでもコンクールに出るかどうか、ギリギリまで悩んでいました。 すでにピアニストとして活動していたので、必ずしもコンクールで80

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