張り出した数寄屋風普請のファサードがちょっと洒落ている。当初は1階が工房兼店舗と台所、2階が家族の住居で、3階は湯治客向けの客間として貸し出されていた。しかし程なく竹参斎が42歳の若さで鬼籍に入ったため工房はお土産屋に転用、戦後は3階も住居として使用されたという。そして令和になりリノベーションされて、その歴史的価値を維持しつつ、現代にマッチした活用がなされている。1階にはお香と和雑貨のお店「やまとごころ」が暖簾を掲げ、2階と3階は小宿「駿河亭」として旅人を迎える。内部は角が丸い面皮柱、風景が少し歪んで見える手延べガラス、サルスベリ材の欄間など建築当時の部材をそのままに、モダンで快適な空間に生まれ変わった。なお、この改修の際には外壁を杉皮張りに復元、大正~昭和初期の湯本坂の景観が甦った。時を超えて愛されてきたこれらの建物は、これからも有馬の街を静かに見つめ、見守り続けていくだろう。旧駿河屋 国登録有形文化財外壁は杉皮張りに復元2階と3階は宿泊が可能欄間にはサルスベリ材を使用室内の至る所に建築当時の面影を残す43
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