あると推察される。また、温泉は熊野権現の法力により熊野灘の海水が芦屋でもぐり込んで有馬で涌出したものだと長らく信じられてきたことも、熊野信仰の影響だろう。非科学的と笑うことなかれ。有馬温泉は熊野の沖でフィリピン海プレートに引きずり込まれた海水が地熱で温められ、岩盤の割れ目をつたって涌いているのだから、この言説は半ば正しい。ところで、前述のように温泉寺は冥界の入口とされたが、『日本書紀』にはイザナミの亡骸は熊野のとある地に葬られたと記されており、それゆえそこは黄よ泉みの国の入口と考えられるようになったとか。その地とは熊野の有馬村、現在の熊野市有馬の花はなのいわや窟神社だという。神戸の有馬も熊野の有馬もあの世に通じているという訳だが、これは偶然なのだろうか?有馬の氏神、温泉守護神として崇敬されている湯泉神社絹本著色熊野曼荼羅図 国指定重要文化財 湯泉神社蔵 提供:大阪市立美術館38
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