KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年10月号
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高エネルギー加速器研究機構の多田と申します。前回は、「冷たい暗黒物質」の候補二つのうちのひとつ、ニュートラリーノについてお話ししました。今回は、もうひとつの候補であるアクシオンについてお話しします。第9回で、「CP対称性の破れ」についてお話ししました。「C(電荷)」と「P(パリティ、空間配置)」をどちらも正反対にすると対称になるのが「CP対称性」で、「破れ」ということからこれが対称ではないことを意味します。物質と反物質でまったく対称だと我々は存在しないことになるので、実際には破れている。ほんの少しだけ破れていれば現在の宇宙の姿は説明できる。そして、その破れを発見する実験が、我々のニュートリノ実験だ、という話でした(実験の話は第10回)。この「CP対称性」は、自然界のいろいろな階層で成り立ったり破れたりしているのですが、第16回でお話しした、自然界に存在する力に関しても適用できます。その中の「強い力」が今回の主役であるアクシオンを生み出す多田先生!素粒子物理学者の   宇宙物理学教室教えて 連載〜第28回〜 アクシオン自然界で最も大きな存在が宇宙、そして最も小さな存在が素粒子と考えられている。素粒子を研究することで、宇宙のはじまり、人間の存在を解明する︱︱ 日本の誇りをかけて、その最前線で日々研究に打ち込む素粒子物理学者・多田将先生。謎に包まれた宇宙について多田先生に教えていただきます。さあ、授業のはじまりです!30

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