KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年10月号
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なぜ、彼に多くの監督たちからオファーが殺到するのか? その理由の一端が氷塊した。〝大都市のデザイン〟を手掛ける男が、人間関係の最小形態である〝家族の基礎〟をつくり損ねてしまう…。この対比が、独創的な映像のなかから、鮮やかに浮き彫りにされていく。 カンヌ映画界での高い評価だけでなく、遠藤は「実は、日本の映画館で行われた試写会での反応にも〝これまでの映画との違い〟を感じています」と語った。「映画の奥深さを感じ取りたい。そんな観客の思いが、ひしひしと伝わってくる。映画のなかに込められた、より深い心の動きに迫りたい、という観客の欲求、真剣さを感じることができるんです」最初に出演依頼を受けたときに胸に覚えた、「これまでの映画とは違う…。この監督に託してみよう」という遠藤の直感は間違ってはいなかった。『見はらし世代』監督・脚本:団塚唯我出演:黒崎煌代 遠藤憲一木竜麻生 菊池亜希子 中村蒼/井川遥企画・製作:山上徹二郎製作:本間憲 金子幸輔 長峰憲司制作プロダクション・配給:シグロ配給協力:インターフィルム、レプロエンタテインメント2025年10月10日(金)、シネ・リーブル神戸ほか、全国公開!©2025シグロ/レプロエンタテインメント映画「見はらし世代」公式HP不変の〝名バイプレーヤー〟俳優の一方、脚本家の顔も持つ。水谷豊主演の連続ドラマ『刑事貴族2』(1991~92年)で脚本を担当した。「その後、しばらく書いていなかったのですが、8年ほど前から、また脚本を書いています」と話す。内容はホームドラマだと言う。「家族の物語です。主演ではないのですが、父役で出演できれば」と構想を語る。1話1時間。9話の長編ドラマ。「まだまだ、書き直す必要がありますが…」と語る表情には、執筆中の脚本への自信が伺えた。悪役から優しい父役、クセのあるコミカルな役まで。〝多彩な顔〟を演じ分けられるのは、撮影現場でも脚本家の思考で考えているからに違いない。「自分は決して器用な方ではない」と言う。だから、「映画もドラマもバラエティーも…。どんな仕事もできる限り準備をし、本番では全力で挑む。それは、これからも変わりません」と言葉に力を込めた。ベテランと呼ばれる領域に入ったが、これまでと同じ。演技で一切手を抜くつもりはない…。鋭い眼光の奥に、演技を追究する謙虚さがにじみ出た。文=戸津井 康之撮影=黒川 勇人29

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