KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年10月号
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ジプトの人たちは死んでも生きているのです。生と死を切り離すのではなく、一直線に生と死を結びつけているのです。日本人は、生の終わりを無と考えています。だから虚無的になってしまうのです。その点、メキシコもエジプトも生死を分別していません。ひとつのものとして、生死を考えています。僕のこの展覧会も、そういう意味ではメキシコ的でエジプト的です。われわれの日常は、常に死から逃れられません。新聞には毎日、著名人の死亡記事が掲載され、テレビ画面からは死の情報がひっきりなしに流れてきます。今回の「髑髏まつり」展はそういう意味では、避けて通ろうとしても避けられない死一色の、しかし実に明るく陽気な死の展覧会になっているのではないかと思います。本展のキュレイターの平林さんが、この間、僕のアトリエにやってきました。頭のてっぺんから足の先まで、持ち物も全て髑髏と骸骨一色のファッションとグッズでやってきました。彼女はいつも、自分がキュレイションする展覧会には、そのテーマそのものに変身してやってきます。頭脳的な展覧会を構想するのではなく、常に肉体的に展覧会をとらえているのです。つまり、対象になりきって、見事にコスプレをしてしまい、いつも僕を喜ばせてくれます。ぜひ、今回の「髑髏まつり」を思いっきり楽しんでください。思いっきり遊んでください。では、会場でお会いしましょう。横尾忠則現代美術館美術家 横尾 忠則1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、東京都名誉都民顕彰、日本芸術院会員。著書に小説『ぶるうらんど』(泉鏡花文学賞)、『言葉を離れる』(講談社エッセイ賞)、小説『原郷の森』ほか多数。2023年文化功労者に選ばれる。復活 ! 横尾忠則の髑髏まつり 2025年 デザイン横尾忠則横尾忠則現代美術館では『復活!横尾忠則の髑髏まつり』開催中!19

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