KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年10月号
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した展覧会は、今までなかったのではないでしょうか。人間は、というか全ての生き物は必ず死にます。死ぬために生まれてきたのです。人間は何のためにたかと思います。あとは、会場に足を踏み入れて、言葉にならない言葉を体験していただきたいと思います。ここまで死を前面に押し出生まれてきたのか。生老病死を通じて、好きなことをして、美味しいものを食べて、恋をして、お金をうんと貯めて、幸福な一生を送るためです、と言われそうですが、それでもなおかつ死にます。そのような人間の宿命を、様々な運命体験を通して語ってきた作品が展示されています。僕は、人間は死ぬものだ、生きるために生まれてきたんだ、なんて、いろいろややこしいことを考えながら、死をテーマにした作品を次々に創作してきたわけではありません。気がついたら、そんな作品を描いていた、というのが本音です。そこを美術館のキュレイターが創造的に面白おかしく(失礼!)見せてくれるのです。さて、この辺りで話題をメキシコに振ってみましょう。メキシコに旅行された方なら誰でも経験されているかと思いますが、メキシコの生活の中には、死がこっそり、というか堂々と入り込んでいます。街やお店の至るところで、われわれは、死のメタファーに出会います。お菓子屋の店頭にズラッと並んだお菓子のパッケー瀬戸内晴美「幻花」野ざらし(十)のための挿画 1975年 作家蔵17

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