KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年10月号
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ネパールの今後はどうなるか?「市内全体から火の手が上がり、ヒルトンホテルが炎上。仕事の話は考えることもできない」。ネパールの首都カトマンズ市内の友人の安否をラインで問うた。その冷静を装った声の中にネパールの惨状に対する悲痛と将来の不安が濃厚に沈潜しているようだった。SNS規制の是非―ネパールとベトナムに関係して―すでにSNS利用が復活し、新首相による暫定政権の下で総選挙が実施される予定である。しかし、政財界の癒着・贈収賄に伴う顕著な特権階級化すなわち貧富の格差に対する若者世代(Gen Z)の不満は依然として大きい。「Z世代革命」とも呼びうる政治変革は始まったばかりとみなされる。ネパールの歴史的大事件の直接の契機がSNS規制であった。その後のベトナム消費者クレーム事件先月の本連載(第21回)において「ベトナム消費者の苦情処理は Facebook で公開・拡散する手段も有効である」と指摘した。その後、被害者によれば、ハノイ市公安の政治保安部・教育保安隊の隊長から連絡があった。この教育保安隊はハノイ市内の大学や留学センターなど管理する部門。被害者は手元の証拠書類などを全部提出し、隊長は苦情に対する調査と解決を約束してくれたと言う。これは、ベトナム公安が常時SNSを監視し、その中の苦情や犯罪を処理している実例である。この公安の迅速な対応を被害者は歓迎そして感謝している。治安維持や犯罪抑制という公共性の観点からベトナムはSNS監視を実施中である。SNS規制の是非は世界共通の課題一般に公権力による情報監視は、個人情報や言論・表現の自由に対する侵害また抑制につながり、民主主義や人権擁護の観点から批判される。しかしSNS上の外国勢力による世論の煽動や誘導、個人や組織に向けた誹謗中傷・デマ・差別・ヘイトに対してSNSの監視や規制は「必要悪」とも考えられる。ネパールではSNS禁止が暴動に発展し、ベトナムでは日常のSNS監視を通して国民生活が保護されている。さて日本ではどうか。SNS利用の法整備を熟考・準備するべき時期ではないか。■上田義朗(うえだ よしあき)流通科学大学名誉教授日本ベトナム経済交流センター日本代表外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事日本語教育機関未来創造推進協会(JLEFA)代表合同会社TET代表社員・CEO躍動するアジアベトナム元気ネパールは実質的な戒厳令下に9月13日時点で置かれており、カトマンズ市街を軍隊が制圧し、一般人は外出を制限されている。直接の原因は、政府が偽情報を規制するためにSNSを登録制にしたためにインスタグラム・Xなどが利用できなくなり、それに猛反発した若者が、死傷者が出るほどに暴徒化したためである。そこで今回は、ネパールとベトナムの事例を通してSNS規制の是非について検討する。文・ 上田義朗X第22回平時のカトマンズ市内観光都市カトマンズは復活するか?125

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