本展は、わたしたちにとって最も身近な建築である「住宅」をテーマに、1920年代から70年代という半世紀に焦点を当て、機能的で快適な新しい住まいを探究した建築家たちの実験的かつ革新的な試みをご紹介するものです。20世紀は、公衆衛生に対する意識の高まりや、鉄やガラスといった新素材の普及、工業化の進展、労働や生活の効率化といった、現代へとつながる社会変化が次々に起こった時代でした。こうした生活様式の変化や技術革新に伴う課題に建築家たちがいかに応えたのかを探るため、本展では「衛生」「素材」「窓」「調度」「キッチン」「メディア」「ランドスケープ」という、モダン・ハウスを特徴づける7つの視点を設定しました。そして、世界各地の14邸の住宅を中心に、建築家たちの様々な試みを紹介しています。例えば「窓」。ル・コルビュジエが両親のために建てた「ヴィラ・ル・ラク」(1923年)は、長さ16m、奥行4mの細長い平屋ですが、その南壁の11mの占める水平連続窓は、太陽の光を室内に均質に取り込むとともに、眼前に広がるレマン湖の美しい景色を切り取ります。一方、ミース・ファン・デル・ローエによる「トゥーゲンリビング・モダニティ住まいの実験1920s-1970s藤井厚二 聴竹居 1928年 撮影:古川泰造けんびの『美』連載vol.1012
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