クセスしやすくなったこと、ドラッグストアやオンラインで簡単に購入できるようになったことが大きいと思います。乱用の末、救急車で運ばれ、最悪の場合は命を落とすケースもあります。また、金銭等が絡んだ交際に付随するメンタルヘルスの問題も増えています。やはりネット・SNSの普及、そして経済格差の広がりが背景にあると思います。本邦における子どもの全体数はこの数十年で大きく減っているにもかかわらず、近年、小中高生の自殺者数が過去最多の水準になっています。特にコロナ禍以降の増加が顕著です。国立成育医療研究センターの調査によると、小学校5年生〜高校1年生の子どものうち、およそ6人に1人が、「1週間に数日以上、死にたくなったり、自分を傷つけようと思う」と回答しています。想像以上に今の子どもたちは死や自傷を身近に感じながら生活している可能性があります。インターネット・SNSの普及により、他人の成功や幸福を強調した情報に日常的に触れる機会が増加し、相対的に利用者自身の自己肯定感が低下する傾向があるとされています。低下した自己肯定感を上げようと、いびつな方法で自己承認欲求を満たそうとしてしまうことにもつながります。SNSでの過度な性的自己表現などもその一つといえ、それがまた金銭等が絡んだ交際や性的搾取の契機となってしまうこともあります。―精神科では治療が可能なのでしょうか。心理検査等を実施し、支援者たちでお子さんの特性を理解した上で、環境調整や支援導入を行うことで、状況が好転するケースはあります。また例えば注意欠如・多動症(ADHD)には有効な治療薬が複数種類あり、相性をみながら内服を調整することで、お子さんの生活が楽になることもあります。精神科を受診して相談して悩みが解決、というわけにはいかないケースが多いのも事実ですが、まずは受診してもらって、お子さん、場合によっては親御さんにとって病院や関連の支援機関が、「いざというとき、どんな言いにくいことでも、相談しにいける場所」となることで、“精神症状の悪化や自傷に至ってしまう前の時間稼ぎ”につながることがあります。この時間稼ぎというのは重要で、特に子どもや若者は、あるとき親や友達との関係性が大きく変化したり、新たな出会いがあったりして、自然と現状が変わっていく機運が訪れることも多いからです。―親は子どもをどのように見守ればいいのでしょうか。子どもは自身の心の状態や悩みを把握・言語化することが難しく、そのため周りの親や友達、支援者ですら、子どもたちのこころのSOSをなかなかキャッチできないものです。そんな中で、ひとつわかりやすいサインが「睡眠状態」といわれています。幼少期の辛い体験の有無や、家庭や学校活動のストレス因子、スマホの使用時間などに比べても、「睡眠障害の有無」が思春期のメンタルヘルス不調の102
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