兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第168回開業医となったいまは、命に対しての考え方が少しずつ変化しています。─どのように変化したのですか。川﨑 厚生労働省による終末期医療に対するガイドラインが平成19年に発表され、このガイドラインに沿ってリビング・ウィルや本人の意思確認、さらにACP(アドバンス・ケア・プランニング=人生会議)などが求められるようになり、私も日々、単純に「看取った」という言葉だけでは表現できないさまざまな終末期を経験し、家族の思い、ご本人の思いを叶えたいといつも考えるようになりました。─患者さんの最期にどう寄り添うかが大切なのですね。川﨑 一方でその環境が不足していると感じます。終末期蘇生の患者が心拍を再開すれば、何事にも変えがたい喜びを感じていたように思います。ところが命を救う最前線の救急医から、人生の終焉に関わり一人ひとりの命に向き合っての毎日を過ごす地域の─医師は命と向き合う大変なお仕事ですよね。川﨑 私はかつて救命センターに勤務していましたが、自身の労働時間など顧みず、命を救うために時間外の対応もしていました。その頃は心肺医療適正化という名の医療費削減に翻弄される医療者たち兵庫県医師会 医政研究委員会委員川﨑医院 院長川﨑 史寬 先生92
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