KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年9月号
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クォーク c s e レプトン ニュートリノ μ τ νe νμ ντ u t d b g γ Z W+ W- G H グルーオン フォトン Zボゾン ヒッグス粒子 グラビトン c s e μ τ νe νμ ντ u t d b g γ Z W+ W- G H スクォーク スレプトン スニュートリノ グルィーノ フォティーノ ズィーノ ヒッグシーノ グラビティーノ Wボゾン ウィーノ 0 2h h h/2 h/2 h/2 3h/2 0 素粒子です。これらを「超対称性粒子(SUperSYmmetric particle、SUSY)」と呼びます。理論物理学者が思いつきで言いだしたものでも、我々実験物理学者はそれを実験によって検証しなければなりません。軽々しく思いつくのは勘弁して欲しいですね。この超対称性粒子も、それが提唱されて以来、ずっとその探索実験が行われてきました。しかし現時点では、これらのうちひとつとして発見されていません。ですから、表の左側はすべて実在する粒子ですが、右側はすべて実在が確認されていません。これら超対称性粒子は、大部分が寿命がきわめて短く、生まれてもすぐ崩壊してなくなってしまいます。しかし、フォティーノ、ズィーノ、ヒッグシーノ(ヒグシーノ)の三つは、安定して存在することができます。これらは、もし存在するとしたら、混ざり合った状態にあると考えられています。この状態を「ニュートラリーノ」と言います。質量は、陽子の五〇倍から三〇〇〇倍の間だと考えられています。ずいぶん重いですね。ここで暗黒物質の候補の特徴を思い出していただきます。「暗黒」であることから、通常の物質と反応しにくく、これまで観測されてこなかったものだ、ということでした。つまりこれはこのニュートラリーノの性質にぴったりではないか、ということで、暗黒物質の候補として脚光を浴びることとなったのです。PROFILE 多田 将 (ただ しょう)1970年、大阪府生まれ。京都大学理学研究科博士課程修了。理学博士。京都大学化学研究所非常勤講師を経て、現在、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所、准教授。加速器を用いたニュートリノの研究を行う。著書に『すごい実験 高校生にもわかる素粒子物理の最前線』『すごい宇宙講義』『宇宙のはじまり』『ミリタリーテクノロジーの物理学〈核兵器〉』『ニュートリノ もっとも身近で、もっとも謎の物質』(すべてイースト・プレス)がある。70

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