同意を求める風潮があります。「これ、マイルス・デイビスのストレート・ノー・チェイサーでのレッドガーランドのソロの始まりだったりするけれど、知ってるかな?」「お、当たり前だろ。超クールだよな。ニヤニヤ。」そんなミュージシャン同士の会話も、お客さんの頷きのジャズの雰囲気が楽しい要因の一つです。「8時だよ、全員集合」と言った途端に停電になった生放送を見た人同士の「ああ、知ってる知ってるあれ」「びっくりしたよねえ」的な共有の楽しさ。僕はソロピアノをやることが大江千里 prole多いのですけれど、ソロにも楽しさがあります。1人でその何役もを演じ分ける楽しさなんです。「お嬢さん、素敵ですね」「何よ、下心あるんでしょ?」「そりゃないっすよ。」「ふん、男はみんな狼よ」そんなコメデイみたいなやり取りもソロだからこそ当意即妙。僕はベースやドラム、パーカッション、弦、ハープ、管楽器、効果音…雨や花火や蝉の声もやります。音楽って自分の中でメモリーが積み重なっていくでしょう?あの夏、この夏、今年の夏、それが時空を超えて楽しめる面白さ。2025年はそんなソロピアノのツアーをしました。昔、ポップ時代に「納涼千里天国」という催しを夏にしてました。みんな浴衣を着て、下駄を履いて、うちわを持って参加するのです。僕の曲が盆踊りのようにアレンジされたり、実際に浴衣ガールズが舞台にたくさん登場したり、「祭」の楽しさ切なさを感じるイベントでした。今年のソロの中で後半に、これを「ソロで」やったんですね。夏を感じる大江千里ポップスを少しジャズにアレンジして、でもダウンビートや4つ打ちは大切にして、一大夏祭りをやっちゃったんです。もしかしたら、この夏は横浜球場より武道館より盛り上がったかもしれない。きっとお客さんそれぞれの人生の「答え合わせ」ができたんじゃないかな。僕自身もそう、NYで益々ジャズを極めよう、そして人生の音楽を極めよう、そう心に誓える瞬間でした。また神戸にも帰ってきますからね。大江 千里1960年生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー。2008年、ジャズピアニストを目指し渡米、THE NEW SCHOOL FOR JAZZ AND CONTEMPORARY MUSICに入学。2012年、自身のレーベル「PND Records」を設立しデビュー。現在、アメリカ、南米、ヨーロッパでライブを行なっている。NYブルックリン在住。 33
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