ぶこの映画は全191分という〝超長尺〟だが、大友監督が明かした言葉に驚かされた。「実は3時間でも長いとは思わない。最初は5時間で撮ろうと考えていたんですから」その理由は明確だった。「終戦後の沖縄の歴史を正確に描こうと思えば、それぐらいの長尺は必要なんです」手本にしていた一本の映画がある。イタリアの巨匠、ベルナルド・ベルトリッチ監督の『1900年』(1976年)。幼馴染の親友2人の人生から、イタリア現代史を浮き彫りにしていく全316分の大作だ。「『1900年』と同じ長さがほしい。許されるなら5時間かけたかった」と悔しさをにじませながら語るが、『るろうに剣心』シリーズは計5部作。合計11時間を超える長尺の叙事詩で、〝最後の侍〟の壮絶な人生から幕末日本の激動期を描き切っている。同シリーズでタッグを組み〝殺陣の常識〟を変えた盟友のアクション監督、谷垣健治を然と姿を消した…》原作の同名小説は2018年、第160回直木賞受賞作。原作者の真藤順丈は映画を見て、こんなメッセージを寄せている。「この作品は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・オキナワ』だなと思った」と。さらにメッセージはこう続く。「昔々、沖縄で、たしかにこのように生き抜いた人々がいた。長尺の叙事詩はまぎれもなく日本映画の壮挙だ。あらゆる境界を超えてどれほど遠くまで旅ができるのか、今から楽しみでならない」〝沖縄への思い〟が集結「長尺の叙事詩」と真藤が呼物資を奪い、住民に分け与える〝戦果アギヤー〟と呼ばれる若者たちがいた。「いつかでっかい戦果を上げること」を夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)にヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)。そしてリーダーのオン(永山瑛太)。戦果アギヤーが大勝負を賭けた基地襲撃の夜。オンは戻ってこなかった。〝英雄〟は忽刑事となったグスクを演じる妻夫木聡の表情は鬼気迫る28
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