KOBECCO(月刊神戸っ子)2025年9月号
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てもおかしくない状況に置かれていたのだ。邦画では稀な総製作費25億円という〝ビッグ・バジェット〟(膨大な製作費)をつぎ込んだ大作映画『宝島』が今月19日、全国の劇場で封切られ、遂にそのベールを脱ぐ。《1952年。沖縄は米統治下にあった。米軍基地から何度も〝逆風〟を乗り越えて…妥協無き映像が銀幕から放つ〝声なき声〟したが、決して嘆いてはいなかった。むしろ大仕事をやり遂げた充実感を漂わせ、ほっとした表情も浮かべていた。安堵するのも無理はない。新型コロナ禍などのあおりを受け、「撮影は2回、延期されています。本来なら2022年に公開されているはずでした」と明かす。頓挫を繰り返し、製作中止になってい苦難を乗り越えた大作この映画は2018年に着想され、企画は2019年から進められていた。「映画化の準備から公開まで6年かかってしまって…。映画監督として思い描いていた私の人生のシナリオも大きく変わりました」大友監督はこう心情を吐露文・戸津井 康之撮影・服部プロセス 新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。 第58回は、NHK大河ドラマ『龍馬伝』や映画『るろうに剣心』シリーズなどで既存の映像の概念を覆し、新境地を切り拓いてきた大友啓史監督の登場です。重鎮監督が新作映画『宝島』で拓いた〝新たな地平〟とは…。 THESTORYBEGINS-vol.58■映画監督■大友 啓史さん⊘ 物語が始まる ⊘26

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