の重要なエレメントになっていますが、歌舞伎にも、うるさいほど様々な音響効果の演出があります。雨や雪、川の水の流れ、昼夜の時間の表現にも音が描かれます。幕が下りていても、舞台の奥から聴こえてくる音だけで、時間や天候まで表現してくれます。映画よりうんと高度な表現だと思います。また、舞台装置にアッと驚くことがあります。舞台のセッ僕は造形美術が仕事の人間ですから、俳優さんひとりひとりをオブジェとして見ます。そして、舞台上の人と人との配置にも関心があります。人物の配置が上手くいっている演出は、それだけで舞台がビシッとしまっています。舞台だけに興味があるのではなく、名画などにも関心がある役者の演出は、一目で、その人の教養までわかってしまいます。映画では、映画音楽が表現の客の入りや質に合わせて演ればいいのです。観客によっては、全力投入しても演技の良さがわかりません。むしろ手を抜いた方がわかるということだってあるのです。「こんな風に僕は舞台を見ているんですよ」と俳優さんに言うと、「ウワー怖いですね」という俳優さんもおられますが、「そんなことは承知で演っています」と返す俳優さんは大抵名優です。尾上右近自主公演 第七回 研の會(2023)© Tadanori Yokoo22
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